1981年生まれの実業家、慎泰俊(シン・テジュン)さんのマラソンエッセイ。
単純に「本州横断」の文字に引かれて手に取ってみたのですが、同世代だからこそびびっとくる箇所が冒頭からありました。
ひょんなことから20代最後の挑戦として「佐渡島一周エコ・ジャーニーウルトラ遠足(とおあし)208km」を走ることに決めた慎さん。
その練習の最中によく聞いていた曲は、なんとX Japanの「Rusty Nail」だったそうな。
そこで思わずくいついてしまいました(笑)
実は私もこの曲が大好きで、走る時にはいつも聴いているのです。
94年のリリース当時、X Japanとしては異例ともいえるシンセサイザーのイントロから始まる、ちょっとポップで疾走感のあるナンバー。
この曲のBPM172くらいのテンポが、私にとっても心地よくて、走りながら何度もリピートしては聴いてしまいます。
慎さんも2011年、この曲を聴きながら佐渡島の練習に打ち込んだといいます。
歌詞の「どれだけ涙を流せばあなたを忘れられるだろう」というフレーズにも感じるものがあったそうで、ここで共感できたためか、その後、本書を一気読みしました。(その後さらにスピッツの「8823」というまたまた私の大好きな曲が登場するという)
本書の内容は、上の佐渡島の挑戦から始まり、520kmの「川の道フットレース」、1648kmの「本州横断マラソン」につながっていく、著者の回想録といえるもの。
随所に具体的な固有名詞が多数登場するからこそ、そのリアリティが伝わってくるのかもしれません。
佐渡島編では私の知り合いのランナーさんも登場して、不思議なご縁も感じました。
特に印象的なのは、慎さんが周りの超ウルトラ界のランナーさんたちに対して感じた気持ち。
最初から最後までそう感じ続けたし、今もあまり本人たちの目の前で言えないけれど、ウルトラマラソンのランナーは頭がおかしいと思う。走りながらビールを飲んだり、消化に全く良くないカップラーメンとか唐揚げを食べてみたり、ほぼ眠らないで徹夜で走っても平気だったり、だけど徹夜で走ることで白昼夢を見て、その白昼夢の話で盛り上がったり。
そんな頭のネジが二、三個外れてしまった人に、明らかに通常人である僕が混じっていると、あたかも言葉が全く通じない国で昔ながらの魔術に根付いた生活をしている部族に、何かの間違いで紛れ込んでしまった現代人になったかのような錯覚に陥る。「なんなんだこの人たちは」という言葉が、頭の中に何回浮かんだことだろう。
「ランニング思考 本州横断1648kmを走って学んだこと」慎泰俊
これは、私もまったく同感(笑)
実際に超ウルトラ界隈で突き抜けた方々を目の当たりにすると、こう思ってしまうんです。
今もそう思うということは、私はまだ「向こう側」の人間ではないのでしょう(笑)
その他本書では、超長距離レースの中で感じる「生と死」について、生々しく語られています。
危険生物対策、車とのすれ違いの対策などの「最悪のケースを回避するためのリスク管理」のくだりはたいへん参考になりました。
慎さんのシニカルだけど前向きで、走り続けるうちに心が澄み渡っていく様子が伝わってきて、読後すぐに走りだしたくなる一冊でした。
実際「川の道」や「本州横断」は(参加資格も含めて)誰でも走れるレースではありませんが、「佐渡島」はもしかするとチャレンジできるかも?
果たして慎さんと同じ景色を見て、自分はどう思うのか?
その時は、ぜひともX Japanの「Rusty Nail」を聴いて走ってみよう、そうしよう。
おしまい≡⊂( ^-^)⊃♫
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