【さくら道への道】桜紀行〜名金線・もう一つの旅〜

人生をまっすぐに生きた男の信念

春になると、私は毎年ある人物のことを思い出します。

その名は佐藤良二さん。旧国鉄バスの車掌として働きながら、自らの手で約2000本もの桜の木を植えた方です。47歳という若さで亡くなった佐藤さんの人生は、まさに桜とともにあったといえます。

2025年4月11日、NHKで放送された「時をかけるテレビ〜今こそ見たい!この1本〜」では、「桜紀行〜名金線・もう一つの旅〜」という特集が組まれ、佐藤さんの軌跡が関係者の証言を交えながら丁寧に紹介されました。

番組の中、池上彰さんが佐藤さんの手記の一節を朗読する場面がとても印象的でした。

「一人で穴を掘り そして美しい花をさかせ そして死んでゆくのが オレの人生だ
人のためにやる仕事ではない 自分の好きなことをして
人々がよろこんでくれ 美しい花がさき それを見て死んでゆきたい」

佐藤良二さんの手記より

この言葉には、ただ花を愛し、桜を通じて人生をまっすぐに生きた男の信念が込められていました。

自分の「好き」が人に届くということ

番組を観ながら、私は「自分が好きでやっていることが、人の喜びにつながる」ことの素晴らしさを改めて感じました。

佐藤さんは決して人の評価のために動いたわけではありません。ですが、その真っ直ぐな姿勢が、今でも多くの人の心に咲き続けているのです。

続く2011年に放送されたドキュメンタリー「ふるさとの桜 荘川桜 50年の物語」もまた感動的でした。ダムの建設により水没の危機にあった荘川桜を、多くの人の尽力によって移植し、見事に咲かせることに成功した奇跡の物語。

その成功が、佐藤さんに「自分も桜に人生をかけたい」と決意させたきっかけとなったのです。

桜が教えてくれる、心の鈴の音

番組では、俳人・夏井いつきさんがご自身の師匠である黒田杏子さんの句を紹介していました。

「花を待つ ひとのひとりと なりて冷ゆ」

黒田杏子

春を待つひとりとして、冷たい早春の空気のなかで、心が静かに高鳴るような情景が浮かんできます。

「身の奥の 鈴鳴りいづる さくらかな」

黒田杏子

満開の桜に包まれた時、自分の中の鈴が風に揺れてちりんちりんと鳴るような――そんな美しい感動が、この句からは伝わってきます。

私はこれからどんな種を植えていくのだろう。ただ好きでやっていることが、めぐりめぐって誰かの喜びになる。もしそんな生き方ができたら、それはとても幸せなことだなと、心から思いました。

この素敵なドキュメンタリー、見逃し配信もあるので、ぜひ多くの人に見ていただきたいです。
(※番組をすべて見るには、NHKプラスにログインまたは初回利用登録がいります)

あわせて読みたい
桜紀行〜名金線・もう一つの旅〜 名古屋と金沢を結ぶ国鉄バス名金線。その沿線に桜を植え、太平洋と日本海を花で結ぶことを夢見ていた国鉄バスの車掌・佐藤良二さんは、志半ばの昭和52年、47歳でこの世...

おしまい≡⊂( ^-^)⊃♫

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次