ミニマリスト、佐々木典士さん(@minimalandism)がこの本を読んでらっしゃるツイートを見かけて、私も手に取ってみました。
もしかすると、多くの人とは読むきっかけが違うかもしれません。
どちらかというと私の場合は、最近人間関係が好転してきたので、半分は客観的、半分は主観的に読むことができました。
友人関係のとらえかた
人間関係の教則本的なものかと思ってページをめくりました。
まずは目次に並ぶ、第1章「友人から一歩離れる」
「人からどう思われるか」を基準に生きない
仲間外しに従わない
友達がいない時があってもいい
手始めに、もっとも辛い関係の代名詞「友人」からはさばいていくというわけです。
読み進めると「ほんとそれな!」と膝を叩くことだらけで、言い方は悪いかもしれませんが、痛快です。
著者の鶴見さんは本当に優しい方なのだろうなぁとじんわり沁みます。
人の痛みや辛さをわかる方だからこそ、整然と淡々と人間関係を切り捨てていけるのだと思います。
「どう思われるか」を気にしなくなる方法なんであるだろうか?もちろん、視線が過密な場所に長い時間いないことは重要だ。特に、悪意のある視線のなかにいつまでもいないことを薦めたい。代わりに、やさしい視線のある場所に行くべきだ。
第1章より
止まない緊張でメンタルが崩壊しそうな場所にいないこと。辛い時はすみやかに、やさしくゆるい人間関係に乗り換えることが重要だということです。
冒頭から優しい言葉をかけてくれるので、涙ぐみながらふらふらと著者についていってしまいます。
私も友人関係にはストレスを抱えてきました。
実感を正直に言うと、常にいっしょにいたいような友人はひとりもいません。
それを口にしてしまうと、血も涙もないやつだと思われそうなので、友人について言及することはあまりないのですが、それが本当の気持ち。
孤独と友人のとらえかたがあります。
一般的には、「友人が多い=理想的」「孤独=悪い」という構図ですが、著者は孤独についてこう考えます。
「自分を否定してくる人間関係」と「肯定してくれる人間関係」、それを両極に置いて考えるべきだ。そして孤独はその真ん中にある、否定も肯定もされない無風状態だ。
第1章より
つまり、孤独に自体に良し悪しはなく、たとえ人間関係を切り離してしまっても、心は中立のままということになります。
私の実感も近いものがあります。
実は大勢の人間でわいわいすることが昔から苦手です。40歳になった今でも、そういう場にいると、すぐに帰りたくなってしまいます。
そんな自分が社会にそぐわない人間なのかもしれないと、一時期思ったことがありましたが、最近はわりと吹っ切れたような気がします。
自分がストレスに感じる場にはいかない、合わない人とは距離を置く、そういったことを意識的にできるようになってきました。
だって、自分の人生ですからね。
人にあわせる必要なんて、ない。
家族関係のとらえかた
この本が特徴的なのは、単なる「人間関係はもっとゆるくいこうよ」という指南書ではないということ。
特に「家族」と言う単位のとらえ方について、深くじっくり考察がされています。
もともと、著者はひどい家庭内暴力を体験してこられたそうで、その経験が家族のありかたに疑問を投げかけています。
一般的な「家族=幸せ」のような、単純なものではないということ。
家族関係のことに触れた第2章では、「日本の殺人事件の半数は、家族の間え起きている。」という衝撃的な言葉から始まります。
このくだりに、著者ご自身の切実な思いを感じます。
家族に対して、血がつながっているからなんだ、と言わんばかりです。
その後、「子どもがいなくてもいい」「毒親もただの個人と思ってみる」「家族の素晴らしいイメージにだまされない」と続きます。
この章は正直、個人的に読みすすめるのがちょっと辛かったです。最後には「家族とは一生離れ離れでもいい」と締めます。なんだか悲しくなりました。
個人的には、今の自分の家族のあり方に満足しているし、むしろそれが人間関係の基盤となっているため、家族に対して否定的な見方ができません。
ただ、家庭内暴力やその他性格の不一致などで、同じ家に住んでいても相手に嫌悪感を抱く人が大勢いる、ということも想像できます。
そういう方にとっては、腑に落ちる内容かもしれません。
自分をもっと甘やかしていい
ここで面白いのは、血のつながった家族に固執せず、いっしょにいる相手はペットでも良いし、それが植物でもふわふわのクッションでも良い、というくだりでした。
そこでは「自分をもっと甘やかしていい」として、こういいます。
(ぬいぐるみを例として) 何かに甘えるような態度は、自立した個人としては好ましくないものとされてきた。それをことさら強く言われてきたのが大人であり、男だったと言える。
第2章より
近年、性的マイノリティが認められるようになってきた流れで、今後は「大人だから」「男だから」の価値観が疑われるだろうということです。
これは私もおおいに共感するところです。
私たち大人であっても、男であっても、甘えたいときは甘えたい。何がいけないのか、と思います。
そう考えると、これまで皆が当たり前だと思っていた価値観のはかなさというか、頼りなさを感じます。
自分が正しいと思った方向に進めば良いのです。
また、第3章では恋人との付き合い方にも触れています。
世間の圧力に押されて恋愛をしなくても良い、結婚をしなくても良い、別れても良い、1対1でなくてもよい、相手はリアルでなくて良い、など。
もう恋愛関係でもなんでもありです。すべて肯定しています。
恋愛関係のありかたに疑問をもつすべての人の心に響くパートだと思います。
海に降る雪
最後の第4章では、人間関係を気楽にとらえられる心構えについて列挙して締めくくっています。
「もうどうしようもない」とあきらめる
怒りは一晩寝てやりすごす
嫌な相手に意識を集中しない
などなど。
もう諦めましょう、離れましょう、忘れましょう、割り切りましょう、というわけです。
人間のことばかり考えるのをやめる具体策として、このようなことを挙げています。
こうしている今も北の海のどこかで、しんしんしんしんと、真っ白い雪が海に降っている。雪は海に落ちると消えていく。その光景を静かに心に浮かべるのだ。
第4章より
SNSで何か大騒ぎになっていて、心が落ち着かない。そんな時でも「海に降る雪」を思い浮かべ、人間どころか生物すらいないのに成り立っている世界に思いをはせる。。。
心の喧騒から離れる手段として、覚えておいても良いかもしれません。
そのうち読み終わるころには、かなり心がほぐれていました。
最近はミニマリズムを発端に、意識的にイヤなモノ・コト・ヒトと距離を置くようにしているので、かつての思春期のような心のわだかまりはなくなってきていると感じます。
とはいえ、現在社会にあふれる人と人。生きている中でかかわりを避けられないときもあります。
そんなとき、できるだけゆるいお付き合いの仕方として、本書の内容が参考になるはずです。