あの体験は、いったいなんだったんだろう?
いま思い出すと、不思議だったことがあります。
たしか、5年ほど前のこと。
仕事の関係で、すこし顔見知りだった方(Sさん)がいました。
なんとなく年齢不詳だったものの、雰囲気で予想すると、40代~50代。
ひょろっと背が高く、スキンヘッドで、ひとなつっこく、理屈っぽく、よくしゃべる人でした。
このSさん、ちょっと変わった方で、マイカーも自転車も持っていなくて、いつも走ってどこかに出かけているのを、見かけました。
買い物もランニング。いつもリュックにネギを背負って走っていたっけ。
ある時、そのSさんが、どうも海外生活が長かったらしく、英語も堪能ということを知りました。
当時、独学で英語を勉強していたものの、なかなか身に付かないのに悩んでいた私は、ひょんなことから、Sさんに英語の個人レッスンをお願いすることになりました。
場所は、Sさんの住む賃貸マンションの一室。
聞くと、他にも若い女性の生徒さんがいる、とか。
本当に??
まったくSさんの英語の実力も知らないまま、わらにもすがる思いで、最初のレッスンに行った覚えがあります。
「お邪魔しま~す」
部屋に入ると、室内は照明がぼんやりついているだけで、全体的に薄暗い。
これは、わざと?
付き合いたての男女の関係であれば、ともすれば「良い雰囲気」なのかもしれませんが。
私たちおじさんが二人。。。
果たして、Sさんの英語のレッスンとは?
さぁ、がんばるぞ!、とかまえる私。
そんな私をよそに、何かに対し、熱弁するSさん。
内容もよく覚えていないのですが、独りでよくしゃべる方だと、いうことだけ覚えています。
そして、肝心の英語のレッスンとは。
渡されたプリントには、短い詩(歌詞?)が書かれてありました。
なんの詩かは、忘れました。
そして、やることとしては、その詩の単語を、ひとつひとつなぞること。
そして、その単語中にでてくるアルファベットを、ひとつひとつ分解して、フォニックスを確認すること。
そう。
これが私がフォニックスを初めて知った時でした。
フォニックス(英: Phonics)とは、英語において、綴り字と発音との間に規則性を明示し、正しい読み方の学習を容易にさせる方法の一つである。英語圏の子供や外国人に英語の読み方を教える方法として用いられている。
フォニックスでは例えば「発音 /k/ は c, k, ck のどれかで書かれる」のように、ある発音がどの文字群と結び付いているかを学び、それらの文字の発音を組み合わせて知らない単語の正しい発音を組み立てる方法を学ぶことができる
ウィキペディア(Wikipedia)より
当時、私は英検準一級を勉強していたのですが、英語の一番基本のキ、のようなところに立ち戻ることになったのです。
アルファベットの「a」「b」「c」、それぞれが、どんな音なのか、ひとつひとつ、ゆっくり、じっくり、ひたすら確認していく、作業。
1回のレッスンで、数個フォニックスを学んで、終わり。
あれ?英語の勉強は??
思っていたのと、なんだか違いました。
なんだよ、こっちは子どものお勉強をしに来たんじゃないんだよ。。
思っていましたが、それ以降も月に2回、Sさんの部屋に足を運びました。
毎回毎回、アルファベットを書いたり、ゆっくり発音したり、紙に書いたり、の繰り返し。
えっと、、、文法は?長文読解は?会話は?
なんにもありません。
ただ、ひたすら、フォニックスの練習。
また、レッスンの合間に、Sさんが食事を作ってくれることもありました。
パスタや、カッサータ(イタリアのアイスケーキ)など、どれも絶品でたまげました。
実はそれが楽しみのひとつで、通っていたのかもしれません。
料理の食材にもかなりこだわっているようで、すべてが手作り。
Sさん、いったい、何者?
一通り食べ終わると、またゆっくり、じっくりのフォニックスが続きます。
これは、英語が上達するまで、いったい何年かかるんだ。。。
当時の私は、忍耐も人間性も、今よりも未熟だったため、結局数か月通って、嫌気がさして、Sさんのレッスンをやめることにしました。
やめるときは、まったく引き留められず、ひどく、あっさりしたものでした。
そしてしばらく会わないうちに、Sさんは風のようにマンションからいなくなり、どこかに行ってしまいました。
なんだったんだろう?
そして、その後に、諦め半分で受験した英検準一級は、めでたく合格。
何が良かったのか、思い返すと、それ以前より、リスニングパートがかなりできていたことに気づきました。
あれ?なんだか以前より、聞こえてくる英語の単語が、ひとつひとつ、クリアに聞こえる。
もしかして、あのフォニックスの練習のおかげ?
あれから数年経った今でも、英語のニュース番組を聞き流していますが、おおよそ何を言っているのか、わかります。
私のリスニングの土台は、ひょっとすると、Sさんのレッスンのおかげだったのかもしれない。。
もしかすると、めちゃくちゃすごい方だったのかもしれない。。
今なら、あの時の無礼をちゃんと謝りたい。
フォニックス、教えてくださって、本当にありがとうございました、Sさん。。
なんとなく、そんな英語の不思議体験を思い出した、朝でした。
おしまい≡⊂( ^-^)⊃♫

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