このお盆の時期って、ご先祖様はもちろん、過去に関わった人たちのことをふと思い出してしまうから不思議。
昨年はこんな話をしていましたっけ。
そして今年はというと、ここまで20年、一度も思い出したことのない彼のことが頭をよぎりました。
今回も「Yくん」なのですが、出会ったのは大学一年生の頃。私は一浪して合格し、Yくんは現役で合格していたので、年齢で言うとひとつ下でした。
今と同じく「陰キャ」な私。大学デビューしようと思って、まっ金キンの金髪の風貌で軽音楽サークルに飛び込みました。(常時バンドTシャツ着用)
当時はギターが好きで自宅で独りで弾いているも、なかなか上達しないもどかしさがあり、「人といっしょに演奏すればうまくなるんじゃないか?」と漠然と思っていました。
入会後、ほどなくしてサークルのライブがあるということで、私たち新入生のメンバーも結束して演奏をする機会を得ました。
当時の私、今と変わらずビビりだったはずなのに、よくそんなところで手を挙げたなと、我ながら感心します。きみ、よく出ようと思ったね?
何を演奏するかなんて、後から決めれば良い、ということで、私からかたっぱしから同級生に声をかけ始めました。
たしかボーカルは、邦楽を聴かない、好きなバンドがDream Theater(アメリカのプログレ集団)だった彼。ベースはまったくの初心者の彼。そしてドラムは、あの「Y」くんでした。
Yくんはさらさらの茶髪と中世的な顔立ちの、ふわ~っとした印象で、妙に甘いマスクだなという印象でした。
結局彼は自分の多くを語りませんでしたが、どうも相当なドラムの腕前。結局ライブ本番までメンバー全員できちんとあわせて練習することもなかったのに、本番で見事に叩いてしまうのでした。
ちなみに2001年の夏、そのライブで演奏したのはこの3曲でした。
「ROCKET DIVE」hide with spread beaver
「彼女の“Modern…”」GLAY
「TONIGHT」LUNA SEA
終わってみれば、演奏はぐだぐだ。私自身もへたっぴだったのですが、なんせバンドとしても一体感はなく、バラバラな音で、終わった後のことは正直よく覚えていません。
メンバーとも「またやろうぜ」ということもなく、そのまま空中分解して、私は結局はそのサークル内であっせんされるライブのバイトのほうに明け暮れることになり、二度とライブに出ることもなく、サークルからもフェードアウトしたのでした。
ですので、正直このライブのこと、軽音サークルのことは、思い出したくもない、私にとっては忘れたい過去、だったのです。
それでも消えない思い出は、あのライブ本番のYくんのドラム。まったくいっしょに練習することがなかったのに、タイトに刻むリズム、卒ないフィルイン、すべてが完璧に決まっていました。きっとドラムという柱がどっしり立っていてくれたおかげで最悪の事態は免れたのかな、と今では思います。
Yくんいわく、「ドラムは一度聴いたらじゅうぶん。次はもう叩ける」。
その言葉が今でも頭から離れません。高校の頃に相当な練習を積んだのか、すでに大学1年生の頃にはインディーズのバンドのレコーディングのサポートメンバーだったとか。
「X JAPANも疲れるけどそんなに難しくないよ」とさらっと言ってのける、クールなYくんの表情にどきっとした私。そのさらさらの茶髪が、ひたすらきれいだったのを覚えています。
そんなYくんとは同じ学部・学科だったのですが、その中で専攻もわかれ、今にいたるまで結局再び交わることはありませんでした。
どうして今彼のことを思い出したんだろう。私が大人になってからドラムを練習するようになったからか、なんなのか。ほんのわずかかわしただけの彼の言葉が、今もアタマの中をぐるぐる回り続けるのです。
そしてやらなきゃ良いのに、「ぐぐってしまう」私。検索窓に「Yくんの名前 スペース ドラム」っと。
きっと彼はあの天才的なドラムのセンスでその道で生きているのだろうと思って、ポチっとエンターを押してみました。すると。
結果、まったくYくんについてドラム関連のネタにはヒットしませんでした。
おかしい、あれだけ才能に溢れたプレイが、ネット上に存在しないなんて、そんなことないはずと思い何ページも見てみましたが、ひとつも、ない。
その代わり、一番上にあがってきた記事を開いてみると、そこには確かにYくんの姿がありました。昨年の記事だったので、彼は40歳だったはず。茶髪は黒髪になっていましたが、それでもさらさら、面影があったので間違いありません。
その記事はドラムとはまったく関係がなく、とあるゲームリリースのインタビューでした。どうやら、私も聞いたことのある超有名ゲームタイトルのディレクターをYくんが務めていたということがわかりました。
ふうむ、やはりただモノではなかった。ドラムで培われた集中力?忍耐力?わかりませんが、あのキラキラした演奏から20年余り、また別の分野で突き抜けていることに、ストレートに感動したのです。
やるなぁ、Yくん。きみは私のことなぞ1mmも覚えていないだろうけど、あの時きみの放った言葉、きみのプレイ、すべて目に心に焼き付いているからね。
Yくんはもうドラムを叩いたりしていないのかな?なんて余計なお世話かもしれないけど、42歳の僕は今叩いているからね、最近は難しいあの曲にも挑戦しようと思っているからね。なんて言ったらきっと笑われるかもしれません。
まぁいいか。お互いに40代、それぞれに楽しんでいこうね。と勝手に締めくくって、その記事ページを閉じたのでした。
窓の外からみんみんみんと聞こえる。まだ暑い日は、続く。
お盆って不思議。ふいに今まで出会った人たちが浮かんでは消える、そんな季節じゃないですか。
ちなみに、今でもギターはへたっぴです。
おしまい≡⊂( ^-^)⊃♫