春の車窓、ローカル線に揺られて
ある春の日、年の近い弟とふと思い立ち、幼少期を過ごした町を散歩しようぜということになりました。
向かった先は、金沢市の隣にある河北郡内灘町。金沢駅の地下から北陸鉄道浅野川線に乗って向かいます。
実はもう20年ほど乗っていません。


高校時代には毎日のように乗っていたこの電車。あの頃は片道300円だった運賃が、今は400円に。改札は手動?駅員さんにスタンプを押してもらう景色で、なんだか安心しました。
2両編成のローカル線、車内は広告も少なく、昔と変わらない落ち着いた雰囲気に、自然と肩の力が抜けました。
平日の午前中だったこともあり、乗客もまばら。春のやわらかな日差しに包まれた車内は、心地よくてついうとうとします。
窓の外には、昔とほとんど変わらない風景が流れていきます。やがて終点・内灘が近づいたとき、不意に耳に届いたのが、松任谷由実さんの「アカシア」でした。
ユーミンの「アカシア」が流れる町
「アカシア」は、ユーミンが内灘のアカシアの花に心を打たれて作った曲だといいます。初めて聴いたはずなのに、どこか懐かしく、やさしく響くメロディ。
しかもこの曲、最近では能登半島地震の復興支援のために新たにミュージックビデオが作られたとのこと。20年以上も前の曲が、時を越えて今なお人の心に寄り添ってくれるのだと知り、胸がじんとしました。
ユーミンの歌声に癒されながら、電車は静かに内灘駅へ。春の空気と音楽とが一体となって、なんとも言えない感動が込み上げてきました。
ぶらり、思い出の町を歩く
降り立った町を、弟とふたりでぶらぶらと歩きました。「この道、こんなに短かった?」「この塀、もっと高かった気がするよね」
そんな会話をしながら、変わった景色と変わらない風景を見つけては、笑い合うひととき。子どもの頃の記憶と今の自分たちが重なり合う、不思議な感覚でした。










昔からあるショッピングセンターの特売コーナーでは、ふと目に入った帽子が気になって試しにかぶってみたところ、ぴったりサイズ。しかも680円。
レジでは「カード× 電子マネー× 現金のみ!」とあり、なにか確固たる意思を感じました。
即決で購入し、うきうきしながら帽子をかぶって帰路についたのでした。

「隣まりだからいつでも来られる距離」と思っていたけれど、あえて電車に乗って出かけてみると、思いのほか特別な時間になりました。
春の穏やかな一日、車窓と音楽と記憶に包まれた、そんな小さな旅でした。
おしまい≡⊂( ^-^)⊃♫