今年の紅白歌合戦のラインナップが発表された時、白組の中に見慣れない名前がひとつ。「こっちのけんと」さん。
そう、今年大ヒットした「はいよろこんで」を歌うアーティストです。
職場で流れる有線から毎日聞こえてくるこの歌、気づけば頭の中でリズムを刻み、語感とメロディに身を任せていました。ですが、ワタクシ恥ずかしながら、ちゃんと曲の印象とアーティスト名が結びついていませんでした。
最近になり、ふとしたきっかけで「はいよろこんで」のミュージックビデオを観ることに。これがまた独特の世界観でいっしゅんで引き込まれました。
昭和レトロを彷彿とさせる四コマ漫画のようなキャラクターたちがシュールに踊り狂うその映像。なんとなく不気味ながらも引き込まれるその演出に、「うまくできてるなぁ」と感心しました。(※それが身近な鬱を象徴するサザエさんのエンディングをイメージしているということをあとで知る)
そして、これまで耳に馴染んでいた歌詞が急に気になり、改めて調べてみると、その奥深さに驚かされます。「はいよろこんで」というフレーズが象徴するのは、すべてを受け入れる「良い人」たちの姿。一見軽快なこの言葉の裏には、現代の生きづらさや社会的な圧力が反映されているのでした。
その象徴的な一節が、「トントントンツーツーツートントントン」という部分。いまさらですがこれ、モールス信号で「SOS」を表しているのだとか。この仕掛けを知ったとき、胸がズシンと重くなる感覚を覚えました。
現代社会で「良い人」として振る舞い続けることの苦しさ、そして「助けて」と言うことの難しさ。そんな心の叫びをこの曲はひょうひょうと軽やかに、辛辣に表しているのです。
くわしくはリスナーの考察に応える「こっちのけんとさん」ご本人によるこちらの解説がたいへん参考になりました。
そして「こっちのけんと」さんご本人についても調べてみたところ、緑色が好きだというご本人のこだわりに、親近感を覚えました。
ワタシ自身も緑色には特別な思い入れ(ある種のヘキ)があり、その一点だけでも共感せずにはいられません。いいなぁ、できることなら私も身の回り緑色にしまくりたい…。
老若男女、今もこれからも、引き続き生きづらい世の中をすすんでいくわけですが、こういった曲がひとつ、自分の引き出しにあるといいですね。
誰も見ていないところで、ギリギリダンスを踊って、なんとか一日一日、やり遂げていこう、と思うのでした。
おしまい≡⊂( ^-^)⊃♫