ハリネズミのトゲが抜けるまで
ワタクシ、人から「優しいね」「怒らないよね」と言われることがあります。
時には、「いい人ぶってるんじゃない?」「ネコかぶってるよね」と揶揄されることもあったり。SNSとリアルで裏表があるんじゃない、みたいな。
でもここだけの話。正直に言うと、今の自分は“もう怒る気力がない”というのが本音かもしれません。
特に10代・20代の頃、私は自分のコンプレックスや劣等感に押し潰され、他人を責め、自分を責め、常にマイナスの感情に浸っていました。
人を攻撃し、卑屈になり、どうにもできない現実を他人のせいにして八つ当たりしていた日々。思い出すだけで気分が悪くなるような自分の言動がたくさんあります。もうここに書けないことも盛りだくさん、やりつくしてきました。
ですが、そんな負の感情に満たされていた心は、ある時ふと「もう疲れた」に行きついたのです。
怒ったところで何も変わらない。誰かを傷つけることで自分が救われるわけでもない。それに気づいた頃から、少しずつ、心のトゲが抜けていったのを感じました。
陽のひかりが心を溶かす
その大きなきっかけは、10数年前、妻との出会いでした。太陽のように明るくて、優しくて、私とまるで正反対の存在。あえてはっきり言いますが、陰だった私に、真正面から陽が差し込んできたような感覚でした。
(これを下書きしている今、彼女はリビングでバランスボールの上に乗って、飛行機みたいにぶーんと手足をのばしています)
彼女の器の大きさ、何も否定しない安心感の中で、私は自然と変わっていきました。そして子どもが生まれたことで、その変化はさらに加速。
以前はトゲを逆立てていたかハリネズミの私は、今ではただのつるつるの小さなネズミ。いつもいっしょにいる存在ができて、怒りよりも大切にしたいものが増えたのです。
不思議なもので、心のトゲが抜けていくと、まわりの人や状況に対しても「まぁ、そんな考え方もあるよね~」と客観視できるようになりました。
誰かを責めたり、無理に変えようとしたりすることが、どれほど自分をすり減らしていたかも、今なら痛いほどよく分かります。
負の感情を使い果たして、生きやすくなる
今振り返ると、私はたぶん一生分の負の感情を30代前半までで使い果たしたのだと思います。
だから今は、怒るエネルギーもないし、そんなことより好きなことに時間を使いたい。人がどう思うかも、あまり気にならない。ありがたいことに、自部がそんな好循環の中にいるという実感があります。
40代になった今、びっくりするくらい、心がとても静か。若い頃のようなトゲはもうありません。そしてもう生えてこない、きっと。
だからこそ言いたい。「なんか生きるのしんどいな」と思っている人は、いっそ積極的に負の感情を限界まで使い切ってみたらいい、と。(むやみやたらに人を傷つけるのはいけませんが) するとどこかで「もう疲れたし、もういいや」と思える瞬間が来ると思います。
もしかして人はみんなハリネズミで、そのトゲが抜けてつるつるになった時、本当の意味で身軽に、自由になれるのかもしれません。
おしまい≡⊂( ^-^)⊃♫