暮しの手帖から生まれたロングセラー
文字通り「思いつき」で手に取った一冊の本に、心がときめきました。その名も「小さな思いつき集 エプロンメモ」。
調べてみると、1954年9月発行の『暮しの手帖』1世紀25号から毎号掲載されている長寿連載をまとめたものだそうです。
婦人誌?のため私はまったく知らなかったのですが、読者から寄せられる日常の小さな工夫や気づきを、短い「メモ」としてまとめたものなのだとか。
ふむふむ。テーマは食べもの、着るもの、おしゃれ、住まい、子どものこと、人付き合い、身体のことなど、暮らしのすべてに広がっていておもしろい。
改めて日常そのものが知恵の宝庫なんだなぁと感じました。
軽やかで毒のない文章たち
ページをめくってみてまず感じたのは、そのシンプルさと軽やかさ。
最近よく目にする「○○するコツ!」「おすすめ○○!」のような力みがなく、どれも穏やかな目線で書かれているのです。
一輪挿しをどうぞ
小さな思いつき集 エプロンメモ
黄色いバラの花を一本いただきました。
さっそく一輪挿しの花瓶に挿して飾りました。
近頃は、とりどり花束をいただくことが多いですが、
久しぶりに一輪の花の、端正な美しさに心が和み、
かえって豊かな気分になりました。 (千葉県・○○)
いつもメガネを
小さな思いつき集 エプロンメモ
普段はコンタクトレンズを使用しているのですが、
地震などの非常事態に備えて、メガネを必ず持ち歩いています。
目の調子が悪いときなどにも助かっています。 (大阪府・○○)
服を買うとき
小さな思いつき集 エプロンメモ
服を買う時は、特別にお洒落をするのではなく、シンプルな普段着ででかけるようにしています。試着した時にコーディネートをイメージしやすいですし、シンプルな服に合わせた時にこそ、そのものの良さが見えてきます。 (神奈川県・○○)
こんなふうに押しつけがましさがないので、読んでいると「あ、これ私もやってみようかな」と自然に思える。たとえば、ちょっとした生活の工夫や人との接し方のヒントが並んでいて、「ほらね、めちゃらくでしょ?」と肩の力が抜けるような心地よさがありました。
さらに面白いのは、この現代においても、編集部の方が必要におうじて投稿者に電話をして詳しく聞いたり、料理や手芸などの実用的な内容は自分たちで試してから掲載しているということ。
その風景を想像すると、長年支持される、誌面のあたたかさの理由が腑に落ちます。
誰かの工夫が心を救う
編集部の言葉に「私たちはいつも誰かのひとかけらの工夫によって目の前が明るくなったり、救われたりする」とありました。
なるほど、たしかに暮らしの中で「ちょっと助かった」「ほっとした」という瞬間は、誰かの知恵のおかげだったりします。
そう思うと、この本に収められた628編(!)のメモのひとつひとつが、小さな灯りのように思えてきました。
夕飯を食べてお風呂に入り、布団の中でゆっくりめくりたい。そんな気持ちにさせてくれる、あたたかな一冊でした。
うーん。私も、だれかの役にたちたい。
おしまい≡⊂( ^-^)⊃♫