苦手を自覚してこそできる「備え」の知恵
知人Kさんから聞いた、ある職場の上司のエピソード。
その方は、誰もが認めるほど仕事ができる人なのですが、ひとつだけ苦手なことがあるそうです——それは「財布をよく忘れる」ということ。
ある日、職場でどうしても現金を徴収しなければならない場面があり、その上司も対象になそうな。
ところが、やはり財布を持ってきておらず、手元の現金が足りない状態に。
普通なら「どうしよう」と慌てそうな場面ですが、その上司は落ち着いた様子で「そんなこともあろうかと」とスマホケースからお札を取り出しました。
どこからでも出てくる「非常用」
ですが、それでもまだ金額が足りません。そこで上司は「いや、大丈夫」と言って、デスクの引き出しからもう一枚お札を取り出します。
無事に必要額がそろい、Kさんは「準備がいいですね〜」と感心したそうです。
冗談半分で「でもこれで非常用がなくなってしまいましたね。今日このあと何かあったら心配ですね」とKさんが言うと、「大丈夫だよ、ほら、ここにもあるし」と〇〇ケースの中にしまってあったお札まで見せてくれたとか。二人で顔を見合わせて笑ったといいます。
その上司の方は、自分のうっかり癖をきちんと把握しているからこそ、あらかじめ「非常用」を複数箇所に用意しているのだそうです。
「非常用」の考え方は日常にも活かせる
この話を聞いて、私も他人事ではないなと感じました。なんでもかんでも「非常用」と称してモノを増やしてしまうと、逆に管理しきれず意味がなくなりますが、本当に必要な備えは別です。
財布を忘れやすいなら現金を複数の場所に、鍵をなくしやすいなら予備の鍵を安全な場所に、スマホをよく忘れるなら予備の連絡手段を持つ——そんなふうに、自分の弱点を自覚し、それに合わせた備えを整えることが大切だと感じました。
完璧な人でも、得意不得意は必ずあります。その不得意を無理に克服しようとするより、「備え」でカバーする方が現実的で、安心感も増すというもの。
やはり「安心はじぶんの苦手を認めること」から始まるんですよね。
おしまい≡⊂( ^-^)⊃♫