秘境の暮らしが教えてくれること
田淵俊彦さんの著書『弱者の勝利学』を拝読しました。
テレビ局勤務の著者は、自分を「弱者」だと感じながらも、その立場を逆手にとって活路を切り開いてきた経験を語っています。中でも印象深かったのは、(※私たちにとっての)「秘境」に生きる人々の価値観が紹介されたパートでした。
チベット文化圏の人々は輪廻思想を信じており、「死」を恐れません。だからこそ、「所有」に執着がない。
現世は仮の姿ととらえ、たとえばブータンでは、家族の葬儀に全財産を使い果たしてでも盛大に弔うのが一般的だそうです。
また、ミクロネシアの孤島では、必要最低限のモノだけを簡素な鞄に入れて常に移動する人たちがいます。自然の中で生き抜くには、「持ちすぎない」ことが重要なのです。
「持たないこと」で安定する社会
アマゾンのある狩猟民族の話も印象的でした。彼らは、必要な分だけ狩りをして、余分な殺生をしない。
たとえ動物がたくさん獲れても、それを自分のためにため込むことはしません。むしろ、獲物をみんなで分け合い、つつましく暮らしているときのほうが、村の治安がよくなるというのです。
所有をめぐって争いが起こるのではなく、「分け合うこと」が前提の暮らし。著者がブータンで「これは誰のものですか?」と尋ねたところ、「なぜそんなことを聞くの?」と不思議がられたというエピソードには、所有という概念そのものが根づいていない文化の姿が浮かびます。
弱者であることは、未来の可能性を持つこと
こうした秘境での体験から、著者は「持ちすぎないこと=すべてを求めないこと」だと気づきます。
100%の結果を出そうとせず、たとえ今の自分が5%しか持っていなかったとしても、それは「残り95%の可能性がある」ということ。つまり「持たざる者」こそ、無限の伸びしろを秘めているという逆転の発想です。
比べることに意味がない世界、自分の弱さを強みに変える思考。この本を通して、私自身のミニマリズムへの考え方も大きく揺さぶられました。モノが少ないからこそ、心は自由になれる。
なるほど。持たざることは、決して弱者の欠落ではなく、「最大の武器」であるととらえると、前を向けますね。
おしまい≡⊂( ^-^)⊃♫