【ちょっとした感想文】『読書のチカラ』齋藤孝

さて、次はどんな本を読もう?

ネットで「読書 おすすめ」と検索すれば、一瞬で答えが出るところを、あえて一冊の本に求めてみました。

齋藤孝先生の『読書のチカラ』、たいへん参考になりました。

目次

大学の講義を受けているよう

冒頭から、大講堂で講義を受けている大学生に脳内トリップ。

著者の斎藤先生が、一生懸命に「近頃の若者諸君、人間たるもの、読書すべきだよ!」と熱弁する様が目に浮かびます。

本書の装丁はちょっとかわいいのですが、内容は辛辣な読書再考論でした。

もはや、「読書をしない人は人間失格!」、と言わんばかり、と思いきや。

だから私は、「読書しない人間は人にあらず」ぐらいには思っているし、特に学生にはそう言い続けている。「読んだほうがいい」というレベルではなく、「読まなければダメ」と説いているのである。

『読書のチカラ』 齋藤孝

はっきり言っちゃってるーっ!

うーん、きびしい。

ですが、これくらい歯に衣着せぬ説き方のほうが、身体を傾けて話を聞こうとなるものです。

私も一時期読書から離れていた時があったのですが、確かに、本に触れていない期間は人間として自分がぺっらぺらだと感じたものです。

少し風が吹いたら簡単に飛ばされそうな時もありました。

齋藤先生も「なぜ日本人の精神力は弱くなったのか」の答えを読書不足によるもの、と言います。

強風が吹いても折れない心を補強するための読書、と言っても良いかもしれませんが、そこを端的に述べたくだりがありました。

「潜る力」を身につける

およそ人類が到達してきた思考は、きわめて深いのである。それは、地層の奥深くを流れる清らかな地下水のようなものだ。それに比べれば、私たちが日常的に直面するトラブルは、川の水面の濁り水にすぎない。たしかに飲めば苦いが、深く潜れば清流がある。要は、それを知っているか否か、「潜る術」を身につけているか否かが大事なのある。その「潜る力」、「沈潜する力」を授けてくれるのが、読書である。

『読書のチカラ』 齋藤孝

私たちが日々あれこれ思い悩むことは、すでに人類の悩みとしては出尽くしてしまっているもので、実は斬新な悩み、というものはないはずです。

たとえばお金、健康、人間関係、ビジネス、ありとあらゆる問題・トラブルは、私たちが生きている現時点より先に、どこかの誰かが経験しています。

そしてそれを教えてくれるのが、本だといえます。

「なぜ読書をするのか?」

の答えが、斎藤先生の言う「潜る力」を身につけるためだと思えば、肚落ちします。

ありがたいことに、先人たちはその書著の中で、今の私たちの抱える悩みの答えにいたらなくとも、必ずやヒントを提示してくれています。

つまり、それをすくい上げる作業が読書、なのです。

活字を追いかけるめんどくささの先に、精神の安定がある。

運動の辛さの先に心地よさがある、ということにも通じますね。

心に“森”を持つ

本書では、これでもかと言わんばかりの斎藤先生による読書技法が紹介されていて、どれもふむふむと興味深く読めます。

そして終盤でさらに、メンタルのもろさを露呈する若者に警鐘を鳴らします。

本を通じて偉大な他者の存在を知り、ときには耳の痛いことも言われ、それでも受け入れ続けること。そうすると、気がつけば偉大な他者は自分の味方になってくれるのである。その一本一本が集まれば、それはやがて“森”になる。心の中に、鬱蒼と繁った他者の森ができるわけだ。世の中が求める「大人」とは、まさにこういう心を持った人物を指すのではないだろうか。

『読書のチカラ』 齋藤孝

心に豊かな森を作るため、1本ずつ木を植えていく地道な作業。それが読書の本質なのかもしれません。

植樹のつもりで、幅広く本を読んで心を養っていきたいものです。うんうん。

また、本書の巻末の文庫タイトル300選も要チェックです。

「これを読まねば何を読むのか」に挙げられる、川端康成『雪国』、ゲーテ『ファウスト』、シェイクスピア『マクベス』、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』、などなど。

そういえば、国語の教科書で一部抜粋されたところ以外、恥ずかしながらきちんと読んだことがない!

そこでさっそく、各文豪先生の門を叩いてみようと思ったのでした。

「たのもーっ!!」

読書欲がむくむくと膨らんでくる一冊。ありがとうございました。

おしまい≡⊂( ^-^)⊃♫

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